2010年12月26日日曜日

太平洋戦争こうすれば勝てた



 著書名 太平洋戦争こうすれば勝てた
 著者 小室直樹 日下公人
 出版社 講談社
 発表年 1995年


 著者略歴
 小室直樹 1932年、東京生まれ、京都大学理学部数学科卒業後、大阪大学大学院経済学研究科で研究。その後、ハーバード大学で心理学・社会学、MITでは理論経済学を研究。さらに、東京大学大学院法学政治研究科修了
、博士号取得。

 日下公人 1930年、兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行入行。経済企画庁出向後、同行取締役を経て、現在顧問。1993年より社団法人ソフト化経済センター理事長。多摩大学教授。


 購入日 2010年12月26日
 きっかけ 小室直樹
 目的 太平洋戦争を知る
 目標

目次

〔第一部〕
第一章 いま、なぜ太平洋戦争か

    「イフ」が歴史を解く 14
    真珠湾攻撃は不十分だった 21
    決戦をせずに破れた決戦主義・日本 27
    グランドデザインなき戦争 56
    勝利をどう政治に利用するのか 63
    日本は潜水艦で戦争に負けた 69

第二章 当時の日本の諸相

    昭和十年代、日本は高度成長できた 79
    日本は戦争中も年功序列だった 87
    戦争における「運」とは 91
    ミッドウェーの日本空母は引いて帰れた 97
    無駄な戦いを繰り返した陸軍の組織的欠陥 100
    東条英機の罪業 104
    日本にはスターリンもチャーチルもいなかった 108

第三章 敗戦の端緒

    抜擢も罷免もできない硬直した組織が戦争を招いた 114
    天佑神助主義の末路 122
    兵器を絞り込めなかった弱さ 127
    陸軍は要らなかった 137
    日本はなぜ航空戦に負けたか 142

第四章 戦争の心構えと覚悟

    ハル・ノートは受け入れても良かった 150
    三国同盟を破棄すれば、ドイツは喜んだ 158
    日本はスターリングラード戦を助けるべきだった 162
    イタリア入は日本人よりも勇敢か 169
    日本は「だまし討ち」と非難される謂われはない 176
    日本はオランダとだけ戦争をすれば良かった 181
    支那事変はどう終わらせればよかったか 185

〔第二部〕

第一章 周到な準備なき日本

    戦争設計なき戦争 190
    日本人はどうして戦争が下手になったのか 194
    チャンドラ・ボースの戦争設計に学べ 202
    日本は「皇帝」と「王」の違いを知らなかった 207
    日本も「民族自決」を旗印にして戦えた 212
    土地に執着した農民国家・日本の失敗 219

第二章 戦争の矛盾と仮定

    イギリスの「民族自決」には大きな矛盾があった 227 
    日本がイギリスを叩けば、ドイツはソ運に勝てた 231
    上に戦略があっても下の統制が利かなかった 236
    戦略爆撃機があれば特攻の必要はなかった 240
    アメリカ機動部隊撃滅シミュレーション 245
    日本はB29級の爆撃機を作れたか 254

第三章 果て遠き国際国家への道

    チャーチルとヒツトラーは同じ穴の格だ 259
    技術のアンバランスは後進国の特徴 262
    日本は国際国家にはなれない 266
    大陸に注ぎ込んだ金があれば、もっとマシな戦争が 271
    いまも変わらぬ国家と国民の相互不信 277

    あとがき 293





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・[主な内容]
真珠湾攻撃は不十分だった/決戦をせずに敗れた決戦主義・日本/日本は潜水艦で戦争に負けた/ミッドウェーの日本空母は引いて帰れた/兵器を絞り込めなかった弱さ/日本はなぜ航空戦に負けたか/三国同盟を破棄すれば、ドイツは喜んだ/「だまし討ち」と非難される謂われはない/イタリア人は日本人よりも勇敢か/日本人はどうして戦争が下手になったのか/土地に執着した農民国家・日本の失敗/日本がイギリスを叩けば、ドイツはソ連に勝てた/戦略爆撃機があれば特攻の必要はなかった/日本は国際国家にはなれない


・抜群の面白さ、太平洋戦争への見方ががらりと変わる, 2000/12/2
By カスタマー

 該博かつ俗説に囚われない独自の視点をもつ小室と日下、取上げる材料が太平洋戦争とくれば、これはもう面白くならないほうが不思議というもので、期待に違わず、一気呵成に読んでしまいました。しかし、強大国と戦わねばならぬというこの大事な時に、日本という国の人的メカニズムが最悪のどん底にあったということはどういうことなのだろうかと不思議に思わざるをえない。戦いたくとも戦えないルーズベルトの苦しい立場を外交官の誰一人として見抜いていなかったのか。ハルノートを突き付けられても、はい分かりましたと言って後はのらりくらりとやり過ごす逃げ道があることを政治家の誰か気付かなかったのか。真珠湾攻撃の後、艦隊決戦の戦争形態が既に時代遅れであることを強く主張する軍人がなぜもっと!いなかったのか等々、不可思議な疑問がいっぱいある。要するに日本式組織メカニズムは、戦争というような、常に新しい局面に対応して、果敢な決断と独創を要求される事態には不適であるということだろうか。日清日露戦争時には、日本式がいったん破壊された明治維新の余韻がまだ残っていたから、かろうじて戦うことが出来たと思われる。それやこれや、とにかく読後いろいろ考えさせられる一書である。


・なぜこうできなかったのか?ということ, 2009/5/20
By sirou55 - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー)
 読むと最初に小室氏は「アジアの解放が日本の戦争目的なら日本は大東亜戦争に勝ったが、宣戦の大詔によれば、米英の軍事圧力を武力ではねかえすことが戦争目的で、だから日本は負けた」と解説する。実際、戦争を始めてから戦争目的を拡大し「日本の経済的自立」や「アジア解放」を言い出し始める。戦争目的が初めからうやむやだった。

 著者らは「こうすれば勝てた」の可能性の選択肢をいろいろ挙げたが、史実は「こうできなかった」から負けたわけで、何故できなかったのかを最後に結論づける。

 一言で言えば、制度疲労した官僚制の呪縛。日本では機能集団が共同体になってしまう。陸軍も海軍も共同体になってしまい、日本国の要請より共同体の要請のほうが優先されてしまう。つまり当時日本を牛耳っていた陸軍は「支那撤兵しない」という陸軍要請の方を「日米戦争を回避する」という日本国の要請より優先させてしまった。

 もう一つは海軍の思想の根底にある艦隊決戦思想と艦隊保全思想の矛盾。勝つためには短期決戦をめざしながら、他方では軍艦を失うことを惜しむ。そのため、勝利の秘訣である「意思の集中、力の集中」ができなかった。

 日下氏はオランダにだけ宣戦布告するという妙案を提示しているが、上官の言うことを聞かない、勝手なことをしたがる辻政信みたいな軍人がそこら中にいて、実際は無理だったろうと自ら結論付けている。頭の固い連中には何をいっても無理ということか。

・「巨大なイフ」より「身近なイフ」を, 2005/4/7
By カスタマー

 ある数学者が、イギリス人からこう言われた。「○○の戦いでもう少しだけ運が重なっていれば、英国は勝てましたよ」
へそ曲りでもある数学者は、即座にこう言い返したという。「じゃあもう少しだけ運がなければ、ボロ負けしたってことですな」
 たしかに本書のように、太平洋戦争は「勝てた」かも知れない。
しかし残念なことに、人間に「歴史のイフ」を検証すべき術がない。科学実験で必要な再実験が不可能なのである。本書でも書かれるように、市井の学者たちは「歴史のイフはない」とよく言うが、本当はこのことであり、彼らの説明不足なのだ。
 ところが本書で、二人は誰も検証できないことを棚にあげて、好き勝手なことを述べている。つまり本書で明確になっているのは、二人の人間性の下劣さに過ぎない。
 私は、あえて二人に問いたい。
「なぜ(取締役だった)日本長期信用銀行の破綻を防げなかったのか?」(日下)
「なぜ(一流学者の薫陶を受けたのに)大学に籍がないのか?」(小室)
二人は戦争という「巨大なイフ」より、まず自分の過去という「身近なイフ」を検討しては如何だろう?
「太平洋戦争に勝てる」お二人ぐらいなら、銀行の破綻や学者として身をなすことなど、とるに足らぬことではないか!





リンク

・戦争は誰がどんな目的で起したか?

・誰が儲けて、誰が損をしたか?

・誰が責任を取ったか?

・どんな反省をしたのか? 総括はできているのか?
 今、生きている人はどう思っているのか?:政治家、教師、市民



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