目次
本論文は全体像を分かりやすく説明することに重点を置くので、いちいち詳細な出典などは記していない。典拠などの詳細は下記を参照していただきたい。
・HP《ミトラ教研究.近代エソテリシズム概論1:ミトラ教と神智学・人智学》 …歴史 ・HP《ミトラ教研究.近代エソテリシズム概論2:ミトラ教と神智学・人智学》 …カルデアのカバラ ・HP《ミトラ教研究.近代エソテリシズム概論3:シュタイナー人智学の研究》 …人智学の概要 ・HP《ミトラ教研究.近代エソテリシズム概論4:神秘体論の基礎と歴史》 ・HP《ミトラ教.天使七星学.近代エソテリシズムにおける七大天使》 …概論5 ・HP《ミトラ教研究.近代エソテリシズム概論6:東方ミトラ教とシュタイナー人智学》 …東方ミトラ教の教義と人智学の詳細 ・・PDF.『ペルシア神話大辞典』ミトラ教天使七星教会
*近代エソテリシズム modern esotericism近代秘教の意で、十九世紀末に起きて世界中に広まった神智学運動の総称である。神智学*と言わずに、あえて近代エソテリシズムと言うのには、神智学運動の内部には、多くの分派あるからである。主要な分派には、ブラヴァツキー派(神智学**)、ジャッジ派(オカルティズム**)、アディヤール派(ネオ神智学**)、シュタイナー派(人智学**)、レーリヒ派(アグニ・ヨガ**)、アリス・ベイリー派(永遠の智慧**)がある。神智学と呼ばずに、近代エソテリシズムと呼ぶのは、各派がそれぞれ独自の呼称を使っているからである。
**神智学 しんちがく Theosophy。
**ネオ神智学 ネオしんちがく Neo-theosophy。
**オカルティズム Occultism。
**人智学 じんちがく。Anthroposophy。
**アグニ・ヨガ Agni Yoga。
**永遠の智慧 えいえんのちえ。Ageless Wisdom。
宇宙進化論 ――777の周期 こうして、神智学的な宇宙進化論――「777の周期」と呼ばれる――の原形ができた。シュタイナーは、この原形を損なうことなく、とてもよく整理・発展させているので、以下にそれを記す。
(1)七つの惑星紀 ①土星紀
②太陽紀
③月紀
④地球紀
⑤木星紀
⑥金星紀
⑦高炉(ヴルカン)星紀
現在は④の地球紀である。地球紀はさらに次の七つの時代に分けられる。
(2)七つの時代 ①ポラール時代 ………………第一根幹人類(影のような人々)の時代
②ヒュペルボリア時代 …………第二根幹人類(単性人間)の時代
③レムリア時代 …………………第三根幹人類(両性具有のレムリア人)の時代
④アトランティス時代 ……………第四根幹人類(アトランティス人)の時代
⑤ポスト・アトランティス時代 ……第五根幹人類の時代
⑥第六根幹時代 ………………第六根幹人類の時代
⑦第七根幹時代 ………………第七根幹人類の時代
人類は①から⑦まで、この順番で発生・進化する。①では第一根幹人類が栄える。彼らは七柱の月の神々の影で「影の影」と呼ばれている⇒『シークレット・ドクトリンを読む』第二部スタンザⅣ:14。②では第二根幹人類が栄える。彼らは単性で「蕾〔つぼみ〕から生まれた」⇒『シークレット・ドクトリンを読む』第二部スタンザⅤ:19。③では第三根幹人類(汗から生まれた者たち)が栄える。彼らは卵生の両性具有者で後に男女両性に分かれた⇒『シークレット・ドクトリンを読む』第二部スタンザⅥ:22。このような幻想的な人類観は、古代アーリアの神話に由来する。以下にそのもととなった神話の概略を記す。
(3)七つの文化期 現在は、(2)④のポスト・アトランティス時代である。このポスト・アトランティス時代もさらに七つの文化期に分けられる。各文化期は2160年、つまり1プラトン月に相当する。
①第一文化期:インド文化期 8227-6067 B. C.
②第二文化期:ペルシア文化期 6067-2907 B. C.
③第三文化期:エジプト=カルデア文化期 2907-747 B. C.
④第四文化期:ギリシア=ラテン文化期 747 B. C.-1413 A. D.
⑤第五文化期:ゲルマン=アングロサクソン文化期 1413-3573 A. D.
⑥第六文化期:ロシア文化期 3573-5733 A. D.
⑦第七文化期:アメリカ文化期 5733-7893 A. D.
現在は⑤の第五文化期である。
影響力
先ほど、「近代エソテリシズムの盛りは過ぎた」と書いたが、このことと影響力は別物で、近代エソテリシズムはいまなお、欧米の精神世界で絶大な影響力を誇っている。これは、①組織に加入することはないものの、自由な立場で近代エソテリシズムの書物を読む人がいまもなお絶えないことと、②1980年代に欧米に登場したニューエイジ思想のほとんどが近代エソテリシズムをもとにしていることによる。
このように大きな影響力を持つ近代エソテリシズムにも、もちろん欠点はある。それは、分派抗争*、訓詁学*化、疑似科学*化である。ニューエイジ思想が、これらに対する反省から生まれたものであるということは覚えておいて、損はないだろう。
*分派抗争 ⇒HP《ミトラ教研究.近代エソテリシズム概論1:ミトラ教と神智学・人智学》の第一部
*訓詁学 くんこがく。本来は儒教における古代言語の解釈学のこと。唐代約三〇〇年間は、孔穎達〔くようだつ〕 574-648が記した訓詁の注釈書『五経正義』だけをたよりとして、古今東西の思想から学ぼうとしなくなった。この風潮を訓詁学化といって、思想の停滞をさす言葉として使う。ここでは、ブラヴァツキー、ジャッジ、シュタイナー、レーリヒ、アリス・ベイリーらの著書を神聖化して、古今東西の思想や新しい学術的知識から学ぼうとしなくなった状態をさしている。
*疑似科学 ぎじかがく。pseudo-science。本物の科学ではなく、光、波動、素粒子、ブラックホール、次元、カオスといった科学的な香りがする単語をちりばめた荒唐無稽な妄想のこと。
まとめ ――接し方
欧米のニューエイジ系の人々がおこなったように、近代エソテリシズムに接しようという人には、脱構築*をおこなって、ポストモダン*の時代にふさわしいかたちで接することをお勧めしたい。そうすれば、欧米のニューエイジ系の人々と同じように近代エソテリシズムを豊かな智慧の源泉にすることができる。
*
脱構築などというと難しく聞こえるかもしれないが、それほど難しいことではない。ミトラや弥勒に関する新しい知識を大いに取り入れて、新しい広い視野で自由な立場から近代エソテリシズムに接し、それを自分なりに解釈すればそれでよいのである。このような読み方をすれば、自然と脱構築ができ、新しい展開が生まれるのである。
*脱構築 だつこうちく。deconstruction。古い構造を破壊し、新たな構造を生成すること。その一方で、新たにつくりだした構造についても絶対化・ドグマ化しないこと。ここでは、訓詁学的な読み方や、いまだトランスヒマラヤの謎、シャンバラの秘密といったものばかりを追いかける姿勢から脱却することをさしている。
*ポストモダンの時代 マルクス主義のような、ある一つの壮大な神話(イデオロギー)が全体を支配する時代が終わり、すべてが相対化される時代のこと。ここでは、近代エソテリシズムの内部論理にとりこまれるのではなく、新しい知識をふまえて脱構築し、新しい認識をつくりあげる時代に入ったことを意味している。
|
0 件のコメント:
コメントを投稿