2010年12月22日水曜日

現代の預言者 小室直樹の学問と思想



 著書名 現代の預言者 小室直樹の学問と思想
 著者 橋爪大三郎 副島隆彦
 出版社 弓立社
 発表年 1992年 

画像
 著者略歴

 購入日 2010年12月20日 小平図書館
 きっかけ 小室直樹
 目的 小室直樹の考え方を学ぶ
 目標

目次

序章 いま、なぜ小室直樹なのか


第1章 ソ連崩壊はこうして予言された

 1.構造‐機能分析をソビエト問題にあてはめる

 2.宗教を禁じた国の「宗教」

 3.スターリン批判がソ連を崩壊させた

第2章 学問ひと筋―日米の碩学の直伝を受けて

 1.システムとの出会い

 2.経済学―一般均衡理論

 3.社会学者・小室直樹―構造‐機能分析

 4.人類学・ヴェーバー・デュルケム研究

 5.構造‐機能分析における小室バージョンの完成

 6.法社会学・政治学・統計学から宗教学まで

第3章 小室学―田中角栄問題と日米・中国・韓国分析

 1.田中角栄とロッキード事件

 2.日米関係の構図

 3.日本社会分析

 4.中国・韓国と日本


主要文献・略年譜


○小室直樹の大きなモチーフ。

人間の発想と行動をとらえている根底的な要因は何かということに対する、あくなき追求。


 ノブレス・オブリッジを欠いた非公認特権階級からは、汚職意識しか生まれないであろう。特権階級の倫理規範は、ほどなく社会全体にみなぎるようになる。特権階級が大きな汚職をすれば、一般人民は小さな汚職をするようになる。そして、社会全体は、汚職のネットワークで結びあわされてしまう。
副島p209
 NHKも大新聞社も、表面だけは公募ですが実情はコネ採用です。これでよく公正な報道と言えると思う。日本の戦後の繁栄を築いた、健全な能力競争制、優秀成績者選抜原則が内側から崩れて、経営者と従業員がグルになったどうしようもない大組織になってしまっている。

○急性アノミー
 日本の敗戦
 ソ連のスターリン批判
 アメリカのケネディ暗殺の真実公開

○「ソビエト帝国の崩壊」p172
 日本人はいつも、問題の本質からかけはなれた議論ばかりしたがる。なぜであろうか。
 その原因は、日本人には法的なものの考え方が国際社会と根本的にずれているためである。
 とくに国会における議論は、防衛問題に限らず、法律偏向の議論があまりにも多い。野党議員が政府を攻める常套手段だが、ほとんどの場合、「こういうことは法律的にできないはずではないか。」という。
 立法府だから法律の議論をするのはかまわないが、しかし議会の機能というのは、立法機能のほかに、民主的に行政府コントロールする点にある。つまり政府の政策をコントロールすることだ。

 なぜそうした議論が起こるのだろうか。これは“一億木っ端役人化現象”の結果である。もともと行政というものは、法律の範囲内でやるべきもので、それを超えてはいけない。当然だが、原則どおりきびしくやってもらわなければいけない。
 ところが政治家は、上に立って政治的な決定をするのが役目なのに、その役目を放棄して、みずから木っ端役人になり下がってしまし、「これは法律的にできない。」などといっている。要するに政治的な責任を取るのがいやで、法律的な責任へ逃げ込んでしまっているのである。
副島
 まさしく、これなのです。今の日本に陥っているのは。この「法律が禁止しているから」「キマリだから」主義なのです。では誰が、そのキマリを決めたのだ。何のために。誰に向かって決めたのだ。ということを改めて問うこともなく。

 法律にはポリティカルな面とプロシージャル(Procedural 手続き)な面がある。プロシージャルな面は役人に任せるべき。

コメント

アマゾンより

・百学を駆使する小室学の真髄に迫る。12年前に小室直樹によってのみなされたソ連邦の崩壊予言。それは、サミュエルソン、パーソンズなど一流の学者から、経済学・社会学をはじめとする10に余る学問を修めた学識をトータルに活かして導いたものだった。冷戦後のこれから、指針をなくした社会科学は何をなすべきかをも示唆する、小室学の入門書。

・小室直樹の業績ダイジェストの決定版です!, 2009/9/9
By s.raymond -
小室ゼミの門下生である、東大教授の橋爪氏、著述家の副島氏が対談形式で小室直樹の著作、研究を時系列で系統立てて、わかりやすく解説しています。

1)小室直樹氏の学問(科学)に対する情熱と根源
2)同氏の研究成果と学会における位置づけ
3)同士の最大の強み
について、各章ごとに解説となります。

副島氏は、ともすると万事謀略説に引水しようと暴走しがちになるところを
橋爪氏が、バランスよくブレーキをかけ科学的・学術的にフォローしていて、絶妙のコンビネーションを発揮しています。

小室氏の著作は多く、その専門分野も広範なところから、ともすると目的とする論説がどの著作(あるいはいつ頃)のものか手間取ってしまうような場合、この本は系統・時系列順に、まとめているので、索引としても有益なものになっています。

・平等の悪性について, 2006/1/2
By 沈思黙考 (冥王星)

 左翼(=平等主義)が、例外なく、内部抗争と党派闘争に明け暮れてしまう仕組みを絵解きし、
マルクス主義(=平等主義)とはスターリン主義(=恐怖政治)であると言い切った小室氏の凄みを噛み締めて頂きたい。
「ソ連国民に世俗内禁欲を強い、社会主義社会建設へむけて驀進(つっ走る)させるためには、 どうしてもスターリンのカリスマが必要であったのだ」『ソビエト帝国の最後』 歴史上、前代未聞である無階級(=平等)社会を緒に就けるためには、カリスマの存在が必要不可欠であった。
 平等を標榜するカリスマにとって、カリスマの併存は、平等そのものの自己否定となる。
 「ソ連において、共産党とソ連陸軍という二大組織が単なる分業と協同の関係に立ちつつ併存することはありえない。
 共産党が勝つか、軍部が勝つか、二つに一つしかないのである」『ソビエト帝国の崩壊』
 平等主義を標榜するカリスマが、平等を実現しようとすれば、恐怖政治(=スターリン主義=内部抗争と党派闘争)に陥らざるを得ないのである。
 追記、ノブレス・オブリッジに関する副島氏の意見(p206-p210)が、大変参考になる。
ノブレス・オブリッジ(=優越者の清貧義務)の源泉は、特権意識(=下位の者をしっかり見下すこと)である。
故に、学力差別を後ろめたく感じざるを得ない我が国のエリートには、そもそもノブレス・オブリッジなど期待できず、
優越感を肯定できないという不全感(=特権意識に対する欠乏感)は、
腐敗(例えば、NHKも大新聞社も、表面上公募だが、コネ採用が実情である)性向の温床となってしまうのである。
競争制試験制度と全人的人間教育とをはっきり区別し、能力競争の勝者に社会的栄誉を与える制度を確立し、
エリートの内面にエリートとしての自覚(=下位の者をしっかり見下すこと)を持たせてやることで初めて、
国民のために身を粉にして働く公僕が育つのだという解釈である。
平等の暗部に目を向けるとともに、エリートの育成を再考すべきではないだろうか?


・アノミー:秩序が壊れ無秩序状態になること

・構造ー機能:社会 要因 構造 機能 評価関数

  要因の変化により機能を達しない構造が出てくる。
 機能を満たさない構造は、変革を求められる。

 
 〈小室直樹略年譜〉


1932年 東京都世田谷区に生まれる。

1937年 会津へ転居。

1951年 福島県立会津高等学校卒業。同窓に渡辺恒三へ渡部喬一がいる京都大学理学部数学科入学。


1955年 京都大学理学部数学科卒業。

    大阪大学大学院経済学研究科入学。市村真一、森嶋通夫、二階堂副包、    高田保馬らの指導を受ける、

1959年 フルブライト留学生としてアノリカヘ

    ミシガソ大学でスーツから計量経済学を、ハーバード大学でスキナーから心理学を、パーソソズから社会学を学び、MIT(マサチューセッツエ科大学.)ではサミュエルソソから理論経済学を学ぶ。

1963年 東京大学大学院法学政治学研究科人学。

    丸山偏男、京極純一に政治学を、川島武官に法社会学を、富永健一より社会学を学ぶ。また、中根手技の4八万人類学の研究をし、社会学的応肝を目指す。

1967年 研究のかたわら法学部の大学院生に博士論文を指導。次第に指

~68年 導を受けるものが増え、「小室ゼミナール」と呼ばれるようになる。

1970年.「社会科学における行動理論の展開」で|城戸賞」受賞。

    練馬に転居しレ大塚久雄にヴェーバーについての直伝を受ける。

1973年 東京大学法学博士号取得(「衆議院選挙区の特性分析」)。

1975年「危機の構造一一日本社会崩壊のモデルー」で「目本研究賞」受賞。

1979年, 断食のしすぎで栄養失調になり入院。心機一転して『ソビエト帝国の崩壊』を執筆。

 
 
 〈小室直樹主要文献〉


1958 “the Equilibrium and Stability of the Market with Demonstration Effect"

         ,Osaka Economic Papers  7-1(14):31-44.

1966 a 「社会勤学の一般理論構築の試み(上)(下)」,「思想」 508:1-20,


1966 b 「構造機能分析と均衡分析一パースンズ枠組の発展的再構成へむかって一」,『社会学評論』64 : 77-103.

1967 「構造機能分析の原理一社会学における一般分析理論構築の準備-」,『社会学評論』71:22-38.

1968  「肯定的立場(機能主義は社会変動を処理しうるか)」(第41回日本社会学会大会報告要旨):1-15.

1968/69「社会科学における行動理解の展開一社会行動論の位置づけと再構成のための試み(上)(中)(下の一)(下の二)(下の三)」

    『思想」524 : I-21, 528 : 125--146,533:H9-135,535 : 129

    -148,537 : 133-144.

1969 a 「社会体系の一般理論に向かって」(第42回日本社会学会大会報告要旨):18-41.

1969 b 「機能分析の理論と方法―吉田理論からの前進―」『社会

    学評論』77:6-22.

1970 (富永健一と共著)「現代社会分析における方法の共通性一経済学と隣接科学の接点-」「経済評論」19-5:93-117.

1972 a 「現代経済学理論」,川島武宜(ed)「法社会学の形成」(法社会学講座 1):382-292,岩波書店。

1972 ♭ 「スキナー・ホマンズ」,川島武宜(ed)「法社会学の形成』

    (法社会学講座 1):346-352,岩波書店。

1972 c 「高田社会学の現代的意義」(第45回日本社会学会大会報告要旨):20-27.

1972d「科学的分析の基礎I,川島武宜(ed)「法社会学研究の技法』

    (法社会学講座 3):181-246,岩波書店。

1972e「規範社会学」,川島武宜(ed)「法社会学の基礎」(法社会学講座 4):203-322,岩波書店。

1973 e 「衆議院選挙区の特性分析」,(東京大学博士論文)

1974a「社会科学は解体された一現代日本のアノミー状況に対処する方法-j,『月刊エコノミスト』5-9:36一53.


1974 b 「社会学における統計的モデルをめぐる諸問題」,『現代社会学』1-2(2):24-55.

1974 c 「構造一機能分析の論理と方法」,青井和夫(ed)r理論社会学』(社会学講座 1):15-80,東京大学出版会。

1974d「日本経済の危機と日本経済学の危機:いまこそ総合的社会科学の樹立が要求されている。」,『月刊エコノミスト』(1月3日号):21-33.

1974 e 「総合化の理論的方法論的基礎研究と予備的実証研究」,『東京都社会指標の研究開発』:127-349,東京都総務局統計部。

1974 f “On the Concept of ‘Marginal Function’ Especially in Re

    ference to the Sociology of Law”, Behaviormetrika 1:65-75.

1975a「理論的方法論的基礎研究と総合指標作成の試み」,『東京都社会指標の研究開発j : 251-426, 東京都総務局総務部。

1975 b Strudural Functional Analysis as a The(-)retical Meth()d

    for the Socioh)gy ofLaw, (mimeographed)

1976a 「理論的方法論的基礎研究と総合指標の作成一試案」,『東京都社会指標の研究開発』:239一部3,東京都総務局統計部。

1976b 『危機の構造-目本社会崩壊のモデルー』,ダイヤモンド社。→1982 b 1991 b

1977 「現代経済学を超える道―政治経済学の復権を促すもの―」,『エコノミスト』55-19(2195):10-24.

1978 「社会指標論の方法論的基礎―とくに東京都社会指標の試作をめぐる諸問題一」,『現代社会学』5-2(10):81-110.

1979 「共通一次試験は必ず失敗する」,『エコノミストj 57-4:48-54,57-5:77-83,57-6:54-61.

1980 a 「大学入試不正の“効用”を説く」,『中央公論』:122-134.

1980 b 「“ソ連帝国の崩壊”を喜んでいいのか」,『voice』36 : 72-90.

1980 c 『ソビエト帝国の崩壊』(カッパ・ビジネス),光文社。→1988a

1980d 『アメリカの逆襲』(カッパ・ビジネス),光文社。→1989 a

1981 a “ Japanese Buddhism and the Soka Gakkai : Religeous

    Ethos and Perceptions of Democracy”,Japn Echo 8-2 : 109-121.


1981 b 「創価学会スキャソダルと日本の宗数的特性一一-一近代デモクラ


    シーにおける信仰の自由-一一j,『中央公論』96一2 : 151一169。

1981 c 『日本人の可能性』,プレジデソト社。

1981d『新戦争論』(カッパ・ビジネス),光文社。→1990d

1981 e (山本七平と共著)『日本数の社会学』,講談社。

1981 f 『小室直樹の日本大封鎖-世界の孤児日本は生き残れるか―』,ロングセラーズ。

1981 g 『超常識の方法』(ノソ・ブック),祥伝社。

1981 h 『アメリカの標的一日本はレーガソに狙われている一』,講談社。

1982 a 『日本「衆合」主義の魔力一危機はここまで拡がっている一』,ダイヤモンド社。

1982 b 『増補危機の構造一日本社会崩壊のモデル-』,ダイヤモンド社。←1976b

1982 c 『資本主義中国の挑戦』(カッパ・ビジネス),光文社。

1982 d 『あなたも息子に殺される』(サソ・ビジネス),太陽企画出版。

1982 e 『脱ニッポソ型思考のすすめ』,ダイヤモンド社。

1983a『田中角栄の呪い』(カッパ・ビジネス),光文社。

1983 b 『田中角栄の大反撃』(カッパ・ビジネス),光文社。

1983 c 『政治が悪いから世の中おもしろい』(ワニの本),KKベストセラーズ。

1983d『日本の「1984年」』(21世紀図書館),PHP研究所。

1984 a 「解説」『勤勉の哲学―日本人を動かす原理―』山本七平著:272-356,PHP文庫。

1984b 『偏差値が日本を滅ぼす』(カッパ・ビジネス),光文社。

1984 c 『親子関係は親分と子分だ』(ワニの本),KKベストセラーズ。

1984d 『ソビエト帝国の最期』(カッパ・ビジネス),光文社。

1984 e 『男はいかに生くべきか』,プレジデソト社。

1985 a 『三島由起央が復活する』,毎日コミュニケーショソズ。

1985 b 『奇蹟の今上天皇』,PHP研究所。

1985 c (倉前盛通と共著)『世界戦略を語る』,展転社。

1985d『韓国の悲劇』(カッパ・ビジネス),光文社。→*韓国版もあり

  韓国は、資本主義を支える精神である世俗的な禁欲が完成していない。
  ウェーバーのプロテスタンティズム

1986 a (栗本慎一郎・長谷川和彦と共著)『罵論・ザ・犯罪―日本「犯罪」共同体を語る―」,アス出版。


1986b『韓国の呪い』(カッパ・ビジネス),光支社。

1986 c 『天皇恐るべし』(ネスコブックス),文藝春秋社。

1987 a 『大国・日本の崩壊』(カッパ・ビジネス),光文社。

1987 b 『大国・日本の復活』(カッパ・ビジネス),光文社。

1988 a 『ソビエト帝国の崩壊』(光文社文庫),光文社。←1980 c

1988b 『大国・日本の逆襲』(カッパ・ビジネス),光文社。

1988 c 『韓国の崩壊』(カッパ・ビジネス),光文社。

1988 d 『昭和天皇の悲劇』(カッパ・ビジネス),光文社。

1989a『アメリカの逆襲』(光文社文庫),光文社。←1980d

1989 b 『消費税の呪い』(カッパ・ビジネス),光文社。

1989 c 『中国共産党帝国の崩壊』(カッパ・ビジネス),光文社。

1990 a 『悪魔の消費税』(天山文庫),大陸書房。

1990 b 『ソビエト帝国の分割』(カッパ・ビジネス),光文社

1990 c 『政治が悪いから世の中おもしろい』(天山文庫),大陸書房。

    ←1983 C

1990d『新戦争論』(光文社文庫),光文社。←1981d

1990 e 『アラブの逆襲』(カッパ・ブックス),光文社。

1990 f 『三島由起夫と「天皇」』(犬山文庫),大陸書房。

1990 g 『社会主義大国日本の崩壊一一新自由市場主義10年の意識革命

    一一』,青春出版社。

1991 a 『危機の構造』(中公文庫),中央公論社。←1976b

1991 b 『ソビエト帝国の復活』(カッパ・ブックス),売文社。

1991 c 『ロシアの悲劇』(カッパ・ブックス),光文社。

1991 d r日米の悲劇』(カッパ・ブックス),光文社。

1992a『信長の呪い』(カッパ・ブックス),光文社。

1992 b 『日本資本主義崩壊の論理』(カッパ・ビジネス),光文社。

 

 (註)新聞・雑誌などに多数の論文がありますが、紙幅の都合で一部のみの掲載とさせていただぎます(編集部)。



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