2010年12月22日水曜日

日本人のためのイスラム原論



 著書名 日本人のためのイスラム原論
 著者 小室直樹
 出版社 集英社インターナショナル
 発表年 2002年

画像
 著者略歴

 購入日 2010年12月20日 小平図書館
 きっかけ 小室直樹
 目的 小室直樹を知る
 目標

目次

第1章 イスラムが分かれば、宗教が分かる

 第1説 アッラーは「規範」を与えたもうた

    現代の病根は「無宗教病」にあり
    イスラム理解の「急所」がここにある!
    史上空前の大帝国、現る
    「マホメット教」と呼ぶとムスリムが眉をひそめる理由
    イスラム教を支える「五本の柱」
    規範の大原則は“白か黒か”である
    「イスラム法」のしくみ
    「イスラム共同体」は国籍や人種、身分まで超越する
    キリスト教は規範を完全否定して生まれた!
    二大世界宗教の“母胎”となったユダヤ教
    ユダヤ教の規範は「タルムード」にあり
    内村鑑三も「奇態」と認めたキリスト教の教義
    宗教とは何か 
    教義の理解不足が生んだ“隠れキリシタンの悲劇”
    日本人は“規範嫌い”

 第2節 「日本教」に規範なし

    はたして日本に規範はあるのか
    仏教は誰の教えか
    イスラム教と仏教の決定的な違い
    仏教の救済に「途方もない年月」がかかるわけ
    なぜ鑑真は「日本行き」にこだわったのか
    比叡山が女人禁制でなくなった根本的原因
    規範を廃止した、日本仏教の“教義改革”
    “仏教を超えた仏教”
    「親鸞革命」の驚くべき内容
    日本仏教とキリスト教の意外な共通点
    儒教とは「マニュアル宗教」である
    「正しい政治は霊魂も救う」
    日韓関係がいつまでも好転しない本当の理由
    すべてを呑み込む「日本教」
    イスラム教にみる規範の絶対性
    なんとキリスト教は「四神教」だった!
    日本でのイスラム教普及が絶対にむずかしい理由
    

第2章 イスラムの「論理」、キリスト教の「病理」

 第1節 「一神教」の系譜―キリストの「愛」とアッラーの「慈悲」を比較する

    日本人が気づかないキリスト教の異常性
    イエス一大独創“アガペー”
    「愛の宗教」の暴虐と冷血
    「息のあるものは、ことごとく滅ぼした」ヨシュア軍団
    大虐殺の首謀者は、なんと神だった!
    パレスチナ問題は、なぜ解決しないのか
    「苦難をも、もたらす神」の大発明
    苦難が連続する日常から生まれた信仰
    なぜイエスが「悔い改めよ」と叫んだか
    「アッラー」になって神の性格は一変した
    イスラム流「聖書の読み方」
    異教徒にも慈悲深いアッラー
    隠れムスリムを“徹底駆除”したスペイン
    なぜイスラムは偶像崇拝を許さないのか
    「戦争の家」を「イスラムの家」に変える義務


 第2節 予定説と宿命論―イスラムにおける「救済」とは何か

    イスラエル人を皆殺しにしようとした神(ヤハウエ)
    「人格神」の心理分析を行ったユング
    「宗教の合理化」こそが、すべての謎を解くカギ
    呪術と宗教の境界線はどこにあるのか
    なぜ仏教は「堕落」したのか
    “困ったときの神頼み”は認めない
    インチキ宗教は、ここで見分けられる
    マホメットが起した「最大の奇蹟」とは何か
    エレミヤの悲劇
    人間には自由意志がない!
    「こんな神様はとても尊敬できない」と言ったミルトン
    予定説を踏みにじったカトリックの秘蹟
    ウェーバーの大逆説
    コーランを丸暗記するムスリム、聖書知らずのクリスチャン
    予定説と因果律が混在したイスラム教
    宿命論的な「予定説」とは
    キリスト教には天国も地獄もない
    イスラム教の天国は、美女と美酒の楽園
    アッラーは商売上手!?
    「永遠の苦しみ」が待つイスラムの地獄
    イスラムはなぜ「暗殺教団(アサシン)」を産んだのか  


 第3節 「殉教」の世界史―イスラムのジハードと中国の刺客、その相似性

    「イスラムの論理」を知らぬアメリカの愚
    暗殺を肯定した大歴史家
    司馬遷が「刺客列伝」を丞相伝(じょうしょうでん)の間に置いた“真意”
    聶政(じょうせい)はいかにして刺客になったのか
    犬死か、名誉の死か
    「歴史教」とは何か
    刺客とは「歴史教」の殉教者だった
    この世の栄華よりも、「歴史」による救済を選んだ男
    「古(いにしえ)をもって鏡となす」中国人
    社会は進化する―マルクスに見るヨーロッパの歴史観
    ヘーゲルが驚嘆した「持続の帝国」
    シーザー暗殺が評価されない理由
    中国とイスラムの意外な共通点
    マホメットを「預言者の打留」としたことの意義
    モルモン教に現れた「新たな預言者」
    「イラン革命」とは何だったのか
    なぜ、ムスリムたちは死を恐れないのか
    イスラム・テロは「狂気の産物」にあらず
    イスラム法学者だけが「ジハード」を宣告できる


第3章 欧米とイスラム―なぜ、かくも対立するのか

 第1節 「十字軍コンプレックス」を解剖する―現代世界にクサビ刺す“一〇〇〇年来の恩讐”

    イスラムはなぜアメリカを憎むのか
    イスラム史を知らずして、世界史を語るなかれ
    綺羅星のごとき、イスラムの英雄たち
    イスラム教徒は清潔好き
    「イタリア・ルネッサンス」もイスラムの賜物だった
    「楽園追放」をコーランはこおう解釈した
    イスラムから“逆輸入”された古典研究
    ヴィスコ・ダ・ガマの冒険も、実はインチキ!?
    忘恩の徒、汝の名はクリスチャン
    十字軍コンプレックスとは何か
    なぜ、「モンゴル・コンプレックス」は“発症”しなかったのか
    「中国人の条件」とは何か
    ウィーン危うし
    歴史シュミレーション「怒涛のイスラム、欧州席巻」
    中世ヨーロッパの「暗黒時代」がなくなる代わりに・・・
    近代ヨーロッパ帝国主義に蚕食されるイスラム
    明治維新を見習ったトルコ革命だったが・・・
    なぜ、イスラムには「香港」や「台湾」が生まれなかったか
    

 第2節 苦悩する現代イスラム―なぜイスラムは近代化できないのか

    なぜイスラム商人たちは「資本家」になれなかったのか
    資本主義の「触媒」となったキリスト教
    予定説が「エトスの変換」を引き起こした
    イスラム法こそ近代化の“強敵”
    「タテの契約」から「ヨコの契約」へ
    約束もまた「インシャラー」
    ムスリムが「ありがとう」と言う相手は、神のみ
    すべてはアッラーの思し召し!?
    イスラム教が説く“究極の”平等思想
    現代イスラムが抱える大いなる矛盾
    イラン革命とは原点回帰運動だった
    「イスラム・ファンダメンタリズム」という大誤解
    湾岸戦争で十字軍コンプレックスは増幅した
    「文明の衝突」論では本質は分からない







・はじめに
 宗教とは法である。
 法とは紙との契約である。紙との契約は宗教の戒律であり、社会の規範であり、国の法律である。この四つがまったく一致するのが宗教の理想であり、イスラム教はまさにそのとおりである。


 事件発生以来、年も明けて半年経った今でも、状況証拠以上の証拠はどこにもない。
 アメリカは中世社会へ逆戻りしつつあるのか。

 聖書に手を置いて宣誓しないでアメリカ大統領になった者は、いまだ一人も存在しない。
 アメリカは巨大なキリスト教国家である。
 キリスト教は元来、異教徒を殺戮することに罪の意識を持たなかった(アメリカ先住民の大虐殺、奴隷の海中投棄、原爆投下などを思い出してみよ)。

 これからの時代は宗教の理解なくして、世界は理解できない。世界を知るカギは、宗教にある。筆者が比較宗教社会学的に分析して「イスラム原論」を著したゆえんは、まさにここにある。
 イスラムを理解すれば、世界がわかる。



リンク

・汗牛充棟かんぎゅうじゅうとう:「イスラム関係の本が汗牛充棟ほども出版された」

・天地雲壌てんちうんじょう:「同じ一神教であっても天地雲壌の違いがある」

・通暁つうぎょう:「ローマ史に通暁しているムスリム」

・エトス:行動様式

・宿痾:慢性的な病。「無宗教病こそ現代日本の宿痾にほかならない」

・刺客列伝:曹沫そうかい、専諸せんしょ、豫譲よじょう、聶政じょうせい、荊軻けいか、高漸離こうぜんり

・風蕭々(しょうしょう)として易水寒し。
 壮士ひとたび去って復(ま)た還(かえ)らず 

 風蕭蕭兮易水寒 壮士一去兮不復還 荊軻

・豹は死して皮を留め、人は死して名を留む 新五代史 王彦章伝

・歴史教では、歴史に名を残すことこそが、個人における救済となる。


・伝統主義とは、「過去に行われてきたという、ただそれだけの理由で、将来における自分達の行動の基準にしようとする倫理」を指す。

・行動的禁欲:信仰のためには、一秒、一瞬たりとも懈怠せず行動すべし!

 宗教改革以降のクリスチャンの間には「行動的禁欲によって天職を遂行すれば、救済される」という思想、もっと分かりやすく言うならば「労働こそが救済である」という思想が確立した。

・キリスト教の根本教義(ドグマ):神を愛し、隣人を愛せよ

 神への愛を「アガペー」と呼ぶ。

・イスラム教:インシャラー「アラーの思し召しのままに」

 「何かを約束する。その約束は必ず守る。けれども、いつ、その約束を履行するかは、当然、努力はするけれども、インシャラーなのである」




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