良寛さんの愛語
自由訳 新井満
考古堂2008/6
愛語、というものがあります
相手をやさしく思いやる言葉という意味です
それは、相手をやさしく思いやる心
言わば愛心から、生まれてきます
まずは、心があって
次にその心から、言葉が
生まれてくるというわけです
あたたかな春風のような愛心
さあ、相手をやさしく思いやる
愛心を持ちましょう
そして
愛心から発せられた愛語を
あの人に、そっとかけてあげましょう
「お変わりございませんか・・・」
世の中には
こんな言葉をかけてくれる人もいます
身体の具合はどうなのだろう
何か困っていることはないのだろうか
何か悩んでいることはないのだろうか
相手のことを気づかう
これも立派な愛語です
では、相手の何について
気づかっているのでしょう
それは、いのち
いのちが、すべての基本です
相手のいのち、即ち相手の
健康と平安を気づかう愛心から
この愛語は生まれました
さあ今日も
あの人に、さりげなく
愛語をかけてあげましょう
「お変わりございませんか・・・」
善いことをした人がいたら
すすんで誉めてあげましょう
「よくやったねえ!」
「すばらしいねえ!」
これも愛語です
世の中には不運な人もいます
善いことに恵まれなかったり
努力したのに報われなかったり
ひどい災難に遭ってしまったり
もし、そんな人がいたら、なぐさめてあげましょう
いたわってあげましょう
手をとりあって、共に涙を流しながら
「たいへんでしたねえ・・・」
「つらいことでしたねえ・・・」
これも愛語です
類が友を呼ぶように
愛語は、もう一つ別の愛語を
呼び寄せます
愛語を発していると
それまで気づかなかった意外なことに
気づくようになります
それは、他人が発している愛語
その背後にかくれている愛心です
そのことに気がつくと
感謝の心が広がります
ありがたいなあ
かたじけないなあ
もったいないなあ
愛語は、新たな愛語を呼び
愛心は、新たな愛心を増やします
よろこびの輪が
大きく広がります
ある日
ある人から、直接
愛語を用いられたとしましょうか
それはとても嬉しいことですね
ありがたいことですね
なぜかといえば
愛語の向こうに、その人の
愛心が感じられるからです
こちらのことを
やさしく思いやってくれている
あの人の心のあたたかさが
直接、伝わってくるからです
すると、思わず笑顔が
浮かんできます
(生きていてよかったなあ・・・)
という気分になってきます
愛心は愛語を生み
さらに笑顔と幸せを
つくってくれます
愛語には
大きな力があります
世の中を変えてしまうような
時代を変えてしまうような
とてつもない力を
秘めています
どうかそのことを
忘れないでくださいね
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